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インタビュー「私とメンター」

Vol.5

「ああしろ」「こうしろ」と言わず、自分で考える基軸を示唆してくれた

西原 浩一郎  全日本金属産業労働組合協議会 議長

「ワーキングウーマン・パワーアップ会議」(事務局:日本生産性本部)では、働く女性のパワーアップを応援する活動を推進する中で、メンターによるサポートが重要であることから「メンター・アワード」を実施しています。第5回は、全日本金属産業労働組合協議会 議長 西原 浩一郎氏に、ご自身の経験から「メンター」と女性の活躍への期待について伺いました。
(インタビュアー:アキレス美知子 ワーキングウーマン・パワーアップ会議 推進委員)

女性の力を運動の力にしたい

写真:西原浩一郎氏
西原 浩一郎(にしはら こういちろう)
慶應義塾大学法学部卒業後、日産自動車入社。日産労連会長、自動車総連会長を経て、現在、全日本金属産業労働組合協議会議議長。2013年8月まで「次世代のための民間運動〜ワーク・ライフ・バランス推進会議」代表幹事。
アキレス 西原議長は、これまで労働組合の視点から様々な活動に取り組んでこられましたが、女性活躍推進についてどのようにお考えですか。

西原 全日本金属産業労働組合協議会(以下金属労協)は、1964年にIMF(国際金属労連)日本協議会として結成され、現在のインダストリオール・グローバルユニオンに加盟しています。インダストリオールは、2012年にIMFをはじめとして3つの国際組織が統合して結成されました。世界140カ国に5000万名の組合員を擁しています。世界的に見ると、日本の労働組合は女性役員の登用が遅れています。これは非常に肩身が狭いことです。そこで、日本における労働組合への女性参画を積極的に求めて、女性の力を運動の力にしていこうとしています。

アキレス ダイバーシティは、違った物の考え方とかスタイルを持った人といかに一緒にやっていくかという発想ですが、一つの切り口として、日本では男女の違いが重要ですね。

西原 そこでまず、クオータ制を採りました。金属労協はずっと男社会でしたが、3年前に会社でいうと取締役会にあたる常任幹事会に、初めて女性を登用しました。全体で男性が10人で、女性は3名まで増やし、今年、もう1人増える予定です。少なくともまず3割。これがインダストリオールの中の一つの基準ですので、何とか達成しようと思っています。
 最初に期待したのは、特に女性に関わる活動領域の意見でしたが、それだけでなく、国内活動、国際活動にわたり、極めて積極的に非常に良い意見を出してもらっています。女性参画によって金属労協も強化されていると確信しています。

アキレス 心強いですね。

西原 彼女たちがロールモデルになって、裾野を広げていけるように、政府のワーク・ライフ・バランスの関係や労働政策審議会など、いろいろ参加して頂いています。

アキレス アベノミクスの追い風で、企業も少し動いてきてはいますが、貴組合のような、男性の世界というイメージの強いところで、女性が主導的な立場で頑張っているという話を、いろいろなところで紹介頂けたらと思います。

西原 やはり労働組合ですので、女性に関わる政策についても、より職場に密着した形で、深い発信ができると思っています。女性活用を本気で進めるためには、男女ともに総労働時間を短縮するということが一つ。それから、ワーク・ライフ・バランス。それと、男性も含めて、仕組みや意識も含めた風土改革を、経営任せではなく一人ひとりが参画できる形で進めていかないとだめだなと思っています。

アキレス 仕組みについては、特に大企業ではかなり整いつつあると思います。ただ、日本生産性本部の「コア人材としての女性社員育成に関する調査」の結果を見ると、制度は作ったけれども、意識・風土はなかなか変わらないと出ています。そのあたりはいかがですか。

西原 一歩踏み出すことが大事です。経営が引っ張るのか、あるいは労使が会議的なものを作ってやるとか、いろいろなアプローチの仕方と手法はあると思います。問題は、そこに踏み込むだけのパワーというか、そこまでの意識にみんながなれるかどうか。例えば、企業が事業構造改革を進めるとき、成功のポイントは従業員の参画です。労使の協力体制ができるかどうか。大きいのは、やはり意識です。

アキレス 具体的に、どういう意識を持つようにすればよいのでしょうか。

西原 健全な危機感をどう作るのか。一つは、危機の実態なり事実を、データも含めて情報開示し、それをしっかり理解する。同時に、それを乗り越えた先にどういう姿を目指すのか共通認識を全社的に作り、それに向けての手法をより明確な形で示すことです。
構造改革には痛みが出ます。その痛みを最大限排除するために、労使がどこまで真剣にそれを論議しているのか。そして、それに対して具体的な手を打っているのか。そのプロセスと結果を見せていかないと、参加してもらえない。それと、参加するためには、その人たちが発言できる機会というものを必ず用意していくことも必要です。ワーク・ライフ・バランスにしろ、女性の活躍を高めるにしろ、共通します。

アキレス 改革・変革には意識改革が付きものですし、一朝一夕でできるものではありませんね。ただ、少しやってだめだったからといって、そこで諦めてしまっては元も子もないので、地道に続けていくことが重要だと思います。

西原 粘り強くという言葉を必ず入れています。諦めない。今は、女性は間違いなく、主体的に自分の道を選択していくことに、ハンデが大きいので、そこをどれだけ除けるかについては、これからの大きなテーマですね。安倍首相の再興戦略の中の女性活躍にも、どういう形で肉付けして、具体的なアクションにつなげるか、ここはやはり労使の知恵がしっかり入らないといけないと思っています。


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