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インタビュー「私とメンター」

Vol.3

メンターの存在が心の安定感
自ら相談に行く勇気を持って欲しい

林 文子 横浜市長

「ワーキングウーマン・パワーアップ会議」(事務局:日本生産性本部)では、働く女性のパワーアップを応援する活動を推進する中で、メンターによるサポートが重要であることから「メンター・アワード」を実施しています。第3回は、横浜市長 林 文子氏に、ご自身の経験から「メンター」と女性の活躍への期待について伺いました。
(インタビュアー:アキレス美知子 (株)資生堂 執行役員/ワーキングウーマン・パワーアップ会議 推進委員)
アキレス 林市長は、これまで様々な企業で経営者としての成功を収め、現在は横浜市長としてご活躍されています。ご自身のこれまでのキャリアを振り返り、この人と出会って本当に勉強になった、助けてもらえた、色々な示唆をいただいた、そういうメンターといえるような方はいらっしゃいましたか。

私が仕事を始めた昭和40年当時は、メンターと感じられるような方はいませんでした。当時、男性と女性の仕事には明確に線が引かれていて、目指すべき女性の先輩は周囲にいませんでした。むしろ、仕事で出会ったすべての方から学んできたという感覚です。でも不思議なもので、私は今、色々な方のメンターをしているんです。
  メンターがいるというのは、本当の安定感につながります。今は会社でメンター制度を取り入れているところが多くありますが、自分をさらけ出して相談できる方を特別に持つということはとても大事だと思います。

メンターという言葉が普及していない時代だから、出会う人は皆我が師

日本で、メンターと言い始めたのは、たぶんここ20年ぐらいですよね。私の年代では、そういう方はいなかったので、「人生で出会う、お一人おひとりが我が師」というのが、自分の中ではぴったりですね。
様々な職種、役職の方と出会い、そこで得た経験が、今の私にとってプラスになっていると思います。ただ、特定のメンターを持ったほうが安定感があるため、私もメンターが欲しかったなという気持ちはあります。私はそういう方がいなかったので、とても苦しみながら仕事をしてきたんです。
  表現が難しいのですが、それは男性社会で育った人の共通の思いではないでしょうか。差別されたということではなくて、感性が異なる人達の中でひとりぼっちでやっていく苦しさだと思います。これが一番大きかった。
私は今までいろんな方から勉強させていただきましたが、それはあくまでビジネスのことで、心を開いて、自分自身のことを本質的に相談ができる方はいなかったんですよ。それが一番苦しかったと思います。

アキレス 林市長はこれまで男性優位社会の中でパイオニア的な存在として活路を切り開き、ご活躍されてきました。そのときに、「苦しいわよね」と共感してくださる先輩の女性がいれば、精神的負担は減ったかもしれませんね。

メンターがいなかったからこそ積極的に女性のメンターになりたい

写真:林文子氏
林文子(はやし ふみこ)
BMW東京椛纒\取締役社長、潟_イエー代表取締役会長兼CEO、日産自動車且キ行役員、東京日産自動車販売椛纒\取締役社長等を歴任し、2009年8月より現職。米フォーチュン誌「世界ビジネス界で最強の女性50人」選出(08年)など受賞歴多数。著書に「会いたい人に会いに行きなさい」(講談社)など。
そうなんです。さらに、私は全部スカウトされて社長になったんですね。オーナー社長ではなく、請われて外からいきなり飛び込んでいくのですから、相談ができないんです。自分が選んで入ったんだから。経営者になると、孤独です。それをしみじみ味わってしまったわけです。だから、私は今、積極的にメンターになりますし、なりたい。いつか市長職を離れたら専門にやってもいいぐらい、本当に支えてあげたいと思っています。

アキレス やはり女性がメンティですか。

女性ですね。メンターを、私の中でどう定義しているかというと、継続的に面倒を見てあげているということです。精神的に動揺して、仕事も虚しくなってしまっている人を立ち直らせるのに、長い時間かけて相談に乗ってあげるのがメンターなのだと思います。

アキレス メンティの立場から言いますと、「いざとなったら林さんに話を聞いてもらおう」と思えること。苦しいとき、迷った時に、自分が話すことを鏡のように映し出してくれて、気づかされる。そういう存在がいるというのは大変心強いです。林市長ご自身も、キャリアを重ねていく中で、悩みを抱え込んでしまうこともあったのではないでしょうか。

抱えていましたね。だけど、もともと人が大好きで、人懐っこい性格だから、自分からいろんな人のところへ飛び込んでいきました。振り返ると、一つひとつが素晴らしい勉強になっていたんだなと、今になってしみじみ思います。
  それから、例えば上司と部下は一緒に仕事をしていく上で、もっと心を開いていくといいですね。積極的に自分から相談に行くことも大事です。こちらから心を開いて相談すれば、それを拒む上司は、おそらくいないですから、特に若い方々には、自分からどんどん相談に行ってほしいですね。

アキレス もともとメンターとメンティの関係というのは、メンティが「あの人は素晴らしい。是非、お話を伺いたい。聞いてもらいたい。」と思って自分から積極的に相談する。そういう関係なんですね。メンターは、何か助けられるのであれば時間を使おうと思っている方が多い。でも、メンティが、その一歩を踏み出すのをためらってしまいがちです。

私は、様々な業種で働いてきましたし、多様な経験をしていますから、若い人と話していると、この方ちょっと悩んでいるんじゃないかなと想像力が働いてしまうんです。それで、初対面の人でも相談に乗ることが多いですね。人間的におせっかいなんですよ。

アキレス 初対面で、ということは珍しい状況ですね。そういう場面であっても、人の心を開く能力というか雰囲気をお持ちなんですね。相手がためらっていたとしても、うまく言葉をかけられるというのは、よいメンターとして、とても大事なポイントだと思います。

やはり、メンターとなる方が、メンティの悩みや本当の気持ちを引き出してあげたほうがいいですね。

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