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インタビュー「私とメンター」

目的や手段を見据え、やり抜く意志やこだわりは女性のほうが強い

アキレス 西原さんからご覧になって、男性と女性のリーダーの違いを感じられることはありますか。

西原 一律的ではありませんが、目的や手段を見据えてやり抜こうという意志やこだわりは、正直言って男性よりも圧倒的に女性のほうが強いと思っています。困難を突破する力とめげない力。男性のほうが結構めげたり。

アキレス 確かに女性には、物事にまっすぐ取り組んで、一度決めたら何とかしてやり遂げたいと思う人が多いですね。

西原 活躍されている方を見ていると、戦略性というのも、ものすごく感じます。人間の心理とか、生活感も含めて、個人ではなくて、みんなを相手にするときに、どういうアプローチをすればいいのかを考え抜いてやる。男のほうがかなり単純で、結構失敗する場合があるのに対して、女性は失敗する可能性が非常に少ない。だから、ジェンダーギャップ指数101位という現状は、日本のこれからを考えたときに、最大課題の一つだと思います。
 経済だけではなくて、NPOや社会運動的な部分でも、女性参画はどんどん広がっている。しかも、生活や地域に密着したところでは、男はどうしても企業にシフトし過ぎているため、物事に対する創造性とか洞察力は女性のほうが圧倒的にあるので、成功する確率はものすごく高いと思います。ですから、これから女性がどんどんリーダーシップをとっていく。それを社会全体がサポートしていかないと、日本はうまくいかないと感じます。

アキレス 男性から見ると、女性が活躍している状況に慣れていないというか、違和感があるといわれることがありますが、どう思われますか。

西原 やはり役割分業意識というのは、払拭しきれない部分が間違いなくあると思います。ただ、それは崩れてきていると思います。若い世代になると、もう少しフェアな形でやれるようなスタイルになってきている。草野さんも必ず会合に行ったら若い人と話をさせろと言っていました。若者と女性。その人たちの発想や、今考えていることがどこにあるのかということが、たぶん世の中に近い部分だと。

アキレス まだ「組織の暗黙のルール」を習得していないほうが、本音の発言が出やすいというのはあるかもしれないですね。

写真:西原浩一郎氏
西原 女性は本音が割とストレートに出ます。男性は非常に回りくどいから、場合によっては問題が先送りになったり、曖昧な形で整理することでもっと問題が大きくなったりすることがあります。僕は日産にゴーンさんが来た時に、今までの日本的なやり方は使えないなと思ったのです。それまでの経営者とは、腹の中で何となくお互いに分かった感じで終わる。それは通じないですよね。彼の返事はイエス、ノー、考えさせてくれ。考えさせてくれは、いつまでと必ず返事を出す。今まであまり突っ込み過ぎないように、男社会の日本人同士でやっていたところに、まさにダイバーシティ。これは一つの企業カルチャーの転換で、日本もそういう方向に間違いなく行くでしょう。

アキレス そうならないと、グローバルを見据えて経営していくのは難しいでしょうね。組織は人でできていますので、単に体制だけをグローバル化しても、人がついていかないとうまくいきません。労組、経営の役割はますます大きくなるのではないでしょうか。

西原 経営側ともそういう話をするのですが、語学力というのは確かにベースになりますが、それだけでなく、いろいろなカルチャーや多様な意見や価値観をまずしっかりと受け止める力と、その中で自分なりのアイデンティティを、より明確に、分かりやすい言葉で発信できる力がないと、本当のグローバル人材ではないと思います。
 労働組合は企業と違って、民主主義的な運営が絶対条件なので、基本的にボトムアップです。もちろんリーダーシップは必要ですが、そこに至る過程の中で、民主主義的な論議をやって、そこでの一定の時間があるからこそ、トップダウンとは違った意見が出てくる。それを真剣に労使が対等に話をするということで、全員が参加し、前向きになれるような体制ができると思うのです。異質な声がぶつからないと。

アキレス それを押さえてしまっては、後々、くすぶったものが変な形で出てくることもあります。

西原 そうです。そういう面では、労働組合というのは大変な手間暇がかかる。そこでいろいろな多様な意見というときに、やはり女性ならではというか、その中での声というものが、われわれにとっては死活的に重要だと思っていまして、これがないとたぶん労働組合というのはもう間違いなく生き残れないと思います。

一人悩まず相談しながらチャレンジを

アキレス そういった部分も含めて、女性リーダーやこれからリーダーを目指す女性に対してどんな期待をお持ちでしょうか。

西原 期待したいのは、自らの意思で選択した道に対して、本当に前向きにチャレンジする。そのための知恵を絞り抜く。一人だけで悩まないで、みんなに相談しながら、そこにチャレンジしていってもらいたいと思っています。チャレンジすれば、間違いなく壁にぶつかるし、グラスシーリングもありますし、いろいろな苦労はあると思います。でも、それを突破するために協力できる、あるいは、引っ張り上げる力はなくても、少なくとも下からそっと支えられるとか、いろいろな形で協力する体制というのは徐々にできつつあります。そのときに、労働組合もそういった一つの力になりたいと思っているし、そのことを信じてがんばってもらいたいなと思っています。

アキレス そのためにも、意思決定ができる場に、有能な女性の参画を増やしていく必要がありますね。

西原 市場では目に見えて女性の決定権が拡大していると思います。自動車でも今、乗用車の購入決定の6割は女性ですよね。その人たちのパワーをどれだけ本当に企業や社会がどう取り込むのか。これはものすごく大きい。デフレ脱却には賃上げと女性活用しかないでしょうね。

アキレス 統計的には、2050年までに今の労働人口は半分になります。そうなると、家庭に入っている女性も含めて、働いていただかないと、経済の成長はもちろん、年金などの制度も支えられなくなります。

西原 ある人が、20世紀は男性の時代で21世紀は女性の時代だといっていましたが、僕もそう思います。20世紀は革命と戦争と暴力の時代。21世紀は本当の平和と安定と健全な成長、そういったものを含めて、女性の時代にしなくてはいけないという言葉に、ものすごく説得力があった。簡単にいかない困難さがあるから、そういう方向を目指すということだと思うんです。
 環境とか平和とか、次の時代のキーワードとなってくると、そこを作り上げている主体に女性が関わらないといけないような、どちらかというと女性の価値観がよりフィットするようなものが多いような気がしています。ですから、21世紀は女性の時代というのは決して、比喩ではなくて、本気で考えていかなければいけないと思います。

アキレス 西原さんがおっしゃるように、発信し続けることがじわじわと効いてくるのではないかなと思います。共感する人が出て、それが広がると、少し勇気を持って、手を挙げる人が増えていく。企業においても、成長の担い手としての女性の活躍を推進し、発信していくことは、今まで以上に重要になりますね。

西原 今は、サンドバーグさんの『リーン・イン』ではないけれども、一歩踏み出す。踏み出すというのはやはり勇気もいるし、瀬戸際で悩んでいる方が多いと思いますが、そのときに僕らも、労働組合の立場で一つの力になれるように努力したいと思っています。

アキレス 今日は本当にありがとうございました。


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