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インタビュー「私とメンター」

事務系と理系の融合や男性と女性の発想の違いもイノベーションにつながる

アキレスお話を伺っていますと、もともとエンジニアリングの会社で男性の世界という感じがしますが、そうなると女性の同僚や部下は限られていたのでしょうか。

斎藤そうですね。私は女性総合職が直属の部下にいるということはありませんでした。設計部門などに総合職の女性の方が入り始めた時には、やはり直属の上司は戸惑いがあったようですね。先ほどお話したような職場だったので、腫れものに触るようなところはありました。もちろん、仕事はきちんとしてもらいますし、そこで支障はなかったと思うのですが、いわゆる日常的な接し方がなかなか難しい。自分の頭の切り替えができないという、最初のころはそんな状態ではなかったかと思います。

アキレスいま、貴社の女性社員比率はどのぐらいですか。

斎藤全体としては14%位ですが、管理職の女性比率はまだ1.8%です。いま増やしていこうとしていますが、重厚長大型の企業特有の弱みもあります。それは、われわれは機械系の会社ですので採用は事務系よりも技術系のほうが圧倒的に多いのですが、機械工学を学んだ女性の数が圧倒的に少ないのです。人事には頑張ってもらっているのですが、母集団が少ないものですから、なかなか応募してくれないというところが悩みです。

アキレス入り口に課題があるのですね。現在、女性管理職の方はどのような仕事をされているのですか。

斎藤研究所や設計、コーポレートの事務系もいますし、航空宇宙関係にも増えてきました。今年初めて、女性の執行役員も出ています。彼女はいまコーポレートで全社の業務改革の担当です。もともとは技術系で流体力学を学んだ人で研究所にいましたが、人事部で採用担当をした後にCSRを担当していました。その前は本社の豊洲移転も彼女がいろいろ仕掛けて、事務局としてやってくれました。

アキレスそうするとエンジニアリングの理系の出身であっても、まさに社長がそうであったように、いろいろ経験してもらうことによって将来は役員クラスに上がっていくのですね。

斎藤そうです。ただ絶対的な人数がまだまだ足りません。来年の4月入社は女性が目標の10%を上回り、12%ぐらいになりそうです。女性の先輩を集めてリケジョのためのセミナーやインターンシップなども行っています。
 一生懸命頑張れば成果に結びつくという意味では、女性も男性と変わらないと思っています。日本がよくなるために、それから会社が成長するためには、イノベーションが必要ですが、それがどのように起こるのかというメカニズムに非常に興味がありますね。
 頭の中で言うと右脳と左脳の話がありますが、感性の違うもの同士が結びついたとき、ふっとイノベーションが起こる。それは個人でもそうだし、グループの活動としてもそうでしょう。例えば事務系と理系の融合もありますし、男性と女性の発想の違いもイノベーションにつながると感じています。
 ダイバーシティを進めていくと、イノベーションは必ず起こると信じていますので、女性も大いに入ってきていただきたいと思います。

アキレスまさにおっしゃるとおりですね。他にはどのようなことをなさっているのでしょうか。

斎藤一昨日も女性管理職とその上司を集めた全体研修をしたり、ネットワークリーダーとして女性課長を地区ごとに任命してメンターのような活動をしています。また、一回退職した人がキャリアリターンできる制度も作りました。

アキレス有能な社員には戻ってほしいでしょうね。あえて現場目線で申し上げますが、仕事の面白さが分かれば女性は辞めないと思います。男性と比べて女性は、結婚・出産などを想定して、キャリア構築を早めに考える傾向があります。その時期に自分があまり期待されていないと思うと、結婚や出産を機に退職を選択するかもしれません。20代の早目の時に、先ほど斎藤社長が厳しいけれど楽しいとおっしゃっていたような経験ができると、「辞めようかな」よりも、「どうしたら続けられるかな」という発想のほうに変わっていくと思います。

斎藤女性基幹職にヒアリングしてみると、男性上司が無意識に修羅場の経験を避ける配置をしているという事が分かりました。最近は人事が上司に修羅場の経験をさせてくださいと伝えています。

アキレスそうですね。せっかくメンタリングのようなシステムがありますし、その辺はトップメッセージも含めて、ぜひポジティブに叱咤激励していただきたいですね。厳しいメッセージも言いながら、サポートしているという組み合わせが有効だと思います。

男女の区別なく能力で評価をしていくので、堂々と仕事をすることが大事

アキレス最後に女性の読者の皆様へ応援メッセージをお願いいたします。

斎藤今の話と関連しますが、個人的には女性と男性を区別したくないですね。きちんと能力で評価していこうと思っているので、女性もコンプレックスを抱かずに、堂々と仕事をするということが大事なのではないかなという気がします。

アキレス日本生産性本部が毎年実施している「コア人材としての女性社員育成に関する調査」では、「女性の活躍推進に対する課題は何か」という設問に対して「女性の意識」という回答が4年連続で1位でした。周囲で頑張れと言っても、「私はいいわ」とひいてしまう女性も少なくありません。これは企業だけでなく、教育や家庭の状況なども影響しているのかもしれません。

斎藤女性自身の意識と管理職の理解と、課題がどちらにもあるのでしょうね。性差で言うと端的な例が出産ですが、われわれ男性は出産できないわけですから、ここは、休暇制度や育児休業制度を使って、仕事は堂々としてほしいと思っています。これは、男性社員に対するメッセージでもあります。

アキレス今日はお忙しいところ、お時間をいただきありがとうございました。


アキレス美知子(あきれす みちこ)
上智大学卒業後、米国Fielding Graduate Institute組織マネジメント修士課程修了。 住友スリーエム人事統轄部長、3M Asia Pacificの人財マネジメント統轄部長、あおぞら銀行常務執行役員、資生堂 執行役員を経て、現在NPO法人GEWEL副代表理事。横浜市男女共同参画推進担当参与。公益財団法人日本生産性本部ダイバーシティ推進センター参与。「ワーキングウーマン・パワーアップ会議」推進委員、及び同会議メンター研究会座長。







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