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インタビュー「私とメンター」

社長や管理職にもメンターの存在が重要

私は、アキレスさんのように、これまでキャリアを積んできて、さらに飛躍したいという方に、特にお役に立ちたいという気持ちをいつもお伝えしているんです。だから、私がメンターとしてお付き合いする方は、40歳代半ばから50歳ぐらいの人が圧倒的に多いです。

アキレス 確かに、その年代はキャリアの踊り場に差しかかる時期ですね。より責任の重い、次のステップに行く迷いと覚悟で悩む方も多いと思います。

今思えば、私も、その位の時期にメンターを持てていたら、どれだけ楽だっただろうか、というのがちょっと反省材料です。でも、経営トップ、CEOになると、立場上、メンターを持つのは難しいです。アメリカの経営者は皆コンサルタントを抱えていますよね。毎日電話している人もいるでしょう。心理療法士ではないけど、そういう方に、悩みを聞いてもらっている。よく映画にも出てきますよね。

アキレス そういった心理面もありますが、エグゼクティブコーチもつけていますね。客観的な立場で色々言ってくれる人が、上に行けばいくほど必要になります。

そうです。日本にはそういう仕組みがないから、自問自答しすぎて自分を傷めてしまうんですね。そんなに考えなくていい、自問自答してなくていいと言ってあげたいという思いが、今とても大きいですね。

アキレス 今のお話を伺って、若い人たちだけではなくて、中間管理職、部長、そして、その上の人たちにも、実はメンターの存在はすごく重要だと気づきました。

そうですね。社長や管理職の人にこそメンターは必要だと思います。管理職の方のストレスが和らげば、部下に対する対応も良くなると思います。人間は神様ではないのだから、感情的になってしまって、自分の気持ちの揺れで、本来腹が立たないことにも苛立ってしまったりするものです。

アキレス 上に行くほど、あらゆる方向からプレッシャーを受けますからね。

今の日本の経済界はプレッシャーも大きいから、皆で張り合っているような気がします。もっと自分の弱みを出したほうがいいと思います。ところが、ある種の競争をしていかないと勝てないといった状況で、弱みを見せることができない。例えば、リストラが厳しく行われている時に、自分の弱い部分を見せてしまったら、リストラに遭うんじゃないかという恐怖感がある。それはとても不幸ですね。人を傷めてしまう。
  基本的に人間は弱い存在だということを前提にするべきです。だから、チームを作り、いろんな人で助け合っていく。もちろん、強くなるためには自分自身を鍛えることも必要です。ただ、一人ですべて頑張らなきゃいけないという考え方、追い込まれるような考え方ではいけないと思いますね。チームでやるべきだと思います。

今ある人間関係だけにとらわれないで欲しい

写真:アキレス美知子
アキレス 美知子(あきれす みちこ)
上智大学卒業後、米国Fielding Graduate Institute組織マネジメント修士課程修了。 住友スリーエム人事統轄部長、3M Asia Pacificの人財マネジメント統轄部長、あおぞら銀行常務執行役員を経て、2011年4月より、資生堂 執行役員に就任。
アキレス 最後に、女性に向けて応援のメッセージをいただけたらと思います。

これからの日本は少子高齢化で、21世紀半ばには、人口がおそらく8700万人を切るだろうと言われています。また65歳以上の高齢者が約4割になります。昔のように男性が一人で家族を養い、社会を支えていくことは現実的ではありません。
  これからの社会には、女性の活躍が不可欠です。横浜市は保育所待機児童の解消に取り組みました。行政も政治の世界も民間の企業も、女性たちが働く環境を、本気になって考えています。時代が大きく変わろうとしているのだから、女性には是非活躍してもらいたい。社会に出て欲しい。そして、自分の世界をしっかり持って欲しいと思っています。子育てを一人で抱え込むのではなく、色々な人の手を借りることは、子どもたちにとっても有益ですし、夫婦の関係も良くなります。お互いに別の世界も持ちながら、家に帰れば一緒という、そういう意味で豊かな生活をして欲しいです。
  そして、職場の中でも、あなた自身が心を開いて話しかけてもらいたい。例えば、上司と折り合いが悪いとか、上司にどうも自分のことを分かってもらえないと感じている人こそ、自分から働きかけてほしい。上司は相談されればうれしいのです。ただ、男の方は結構シャイなので、自分から声をかけられないんですよ。男性の上司でも、女性でも、是非自分の方から「教えてください。ちょっと私自身悩んでいて考えられないので、この辺をアドバイスしてください。」と言ってみてください。必ずアドバイスしてくれます。
  また、自分の弱さを相手に見せることは非常に勇気がいります。でも、そこで本当の勇気を知ることになる。自分の弱みを見せても後悔しない、そういうふうになってこそ、本当の人生の生き方ができる。
  そして、今ある人間関係だけにとらわれないでほしいですね。今この人とうまくいかないからといってクヨクヨしすぎないで、受け流すことも大切です。人間の気持ち、感情は移ろいますからね。そういうことにとらわれすぎては駄目です。それはそれで置いておいて構いません。
  分かってくれる人を探すのも大事ですね。若い時は苦労をお金で買えと言うけれど、本当にそのとおり。私も本当に辛い経験をしましたが、その分間違いなく人に優しくなれます。本当に人が求めているのは優しさです。そこは原点だから忘れてはいけないと思います。是非、良きメンターを見つけてください。

アキレス 本日は、本当にありがとうございました。

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