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開催レポート2014

パネルディスカッション「女性の活躍で、組織にパワーを」

 続いて「女性の活躍で、組織にパワーを」をテーマに、パネルディスカッションが行われた。登壇者は、受賞者の中から、セブン&アイ・ホールディングスのダイバーシティ推進プロジェクトリーダー藤本圭子氏、P&Gの人事部ダイバーシティ担当マネージャー丸谷奈都子氏。コーディネーターは、ワーキングウーマン・パワーアップ会議推進委員でNTTコムチェオ代表取締役社長小林洋子氏である。

セブン&アイ・ホールディングスの取り組み

 セブン&アイグループでは、女性の積極的な登用に1990年代から取り組み始め、1993年に女性初の取締役をイトーヨーカ堂とセブン-イレブン・ジャパンに一人ずつ誕生させた。その後も女性を店長や管理職に積極的に登用し、風土が醸成された。象徴的なのはグループの経営トップである鈴木が、2006年の決算発表説明会で社内外において、女性役員の数を2割から2割5分にすると明言したことだった。
 2012年にダイバーシティ推進プロジェクトを発足させ、主要事業会社8社を集めてグループ横断的な取り組みを開始した。トップコミットメントがいち早くできたことで各グループ会社の女性の積極的な登用が進んでいる。
 同時に女性主体の店舗を各事業会社に1店舗つくった。その中の一つであるイトーヨーカドー高砂店は、店幹部社員は全て女性で運営しており、昨年に比べ、売上、客数とも伸びている。数字だけではなく、精肉や鮮魚売場での業務など男性が主体としてきたことを女性に任せることで、女性自身が自信を持ち、職域も広がって活躍の場も広がるという好循環を生み出した。
 また、女性同士の役職を超えたフラットな感覚がコミュニケーションを活発にし、これまで発言を躊躇していたパート社員も意見を言いやすくなった。お客様の生の声が売り場づくりや商品開発、サービス向上につながる等数値化ができない成果が数多く出ている。
 小売業は現場が主体で、お客様の視点に立った売り場づくりや商品開発、接客サービスを考える必要がある。育児中女性社員のネットワーク作りの目的で昼食時間に開催しているママ'sコミュニティでは、仕事と育児の両立に関するディスカッションを行うだけでなく、イトーヨーカ堂の弁当や惣菜のモニタリングをしている。生活者としての声を商品開発につなげている。
 ダイバーシティは、性別役割意識がまだ残る社会の中で行っている推進活動のため、担う人が大切にしている軸をいかにぶらさずに進めていけるかが大切だと思う。私はぶれそうになった時には必ず「何のためにこの活動をしているのか」という原点に立ち返ることにしている。それは、プロジェクトを立ち上げる前に70名の女性と上司へのインタビューをした際に、女性にいかなるライフイベントも克服して長くイキイキと働き続け、活躍してもらいたいと強く思ったからである。その思いを軸に今、ダイバーシティ推進に取り組んでいる。

P&Gの取り組み

 ダイバーシティへは、1990年代初めごろから20年来取り組んできた。ダイバーシティはビジネス戦略の一環として位置づけている。それは、多様性のある組織がビジネスのよりよい結果を出すことを既に研究しており、新しいイノベーションを生み出すために必要なものであると考えているからだ。
 2000年初めからは、男性社員あるいは考え方の違いを尊重する組織をつくるためのダイバーシティを進めており、現在大きく分けて2本の柱がある。
  まず人材開発だが、ダイバーシティは最終的には個々人の成長とキャリア形成に行き着くと考えている。組織は個人の集合であり、個人の成長を促し生産性をあげることが企業の使命となる。その一環として、その年に行う仕事の優先順位と、必要になるスキルや能力のために何を身に付けるか、キャリア形成について1年に1回上司と話し合う。性別に関係なくベストなキャリアを考え、必要であれば転勤や海外経験を積極的に提案し、障がいや必要なサポートについても話し合う。上司はそのためのトレーニングも行う。この時、ライフプランニングについても、会社と個人双方に一番よいプランを立てる。係長レベルから部長レベルまでの各段階に対応した育成プランも考えている。
 2点目はサポートシステムとして、社内メンターの活用をしている。世界中にメンター人材がおり、日本に限らず世界中のリーダーたちと話すことができる。ペアリングに性別の制限やメンターの人数の制限はなく、相談のテーマごとにメンターを持つ人もいる。また、若手が組織のリーダーのメンターをするリバースメンターの仕組みもある。ダイバーシティには若手の女性社員や駐在で日本に来る外国人をリバースメンティにすることも有効である。
 また、時短制度を使っている社員は少ない。それは、勤務時間の長さによるアウトプットの差は必ずあり、結果を出すには時短を使うと不利になると考える社員が多いからだ。そこで、時間の対応に柔軟性を持たせて生産性を上げようと考えたのがフレックス制度だ。在宅勤務やフレックス制度等を使い、時間管理を月単位で行うことで、個々人の状況に合わせて柔軟に対応できるようにしている。
 一般的に、工場の生産管理や理系といわれる部署では、女性の活躍は難しいと思われがちだが、日本にある3工場のうち2つで女性が工場のトップとして働いている。
 サポートや制度はたくさん作るより、一つの制度でいかに柔軟に対応するかを考えたほうがよい。個々人の違いに対応していくと制度が追いつかなくなるし、企業として経費を常に考える必要がある。選択肢を増やすことはよいが、女性のやる気を削ぐようなことになってはならない。固定概念をできるだけ組織の中からなくし、社員一人ひとりが何を求められているのか、対話し、課題に柔軟に対応できる組織を作るとよいと思う。

ダイバーシティは企業と国家の戦略

 コーディネーターの小林洋子氏は次のように述べた。
 女性の活躍が「外資系だから」「女性対象商材を扱う企業だから」と思うのは大いなる間違いだ。弊社は典型的な日本型企業で、法人対象にNTTコムのネットワーク商材を扱っていたが1000人の法人営業部隊のトップ営業は2人とも女性だった。
 日本は昔、結婚後は寿退社だったが、今は出産しても働き続けるのが当たり前となった。しかも一部のパイオニアとしてではなく、普通の人がキャリアを断絶することなく働き続けることが期待されている。社会は加速的に変化しており、女性が主役の時代が来た。ダイバーシティは、企業の生き残り戦略であり、日本が勝つための国家戦略である。強く幸せな日本を作るために、企業と働く女性たちに輝いてほしい。

 プログラム終了後には、推進委員、エンパワーメント大賞受賞者と参加者による交流会を開催し、活発なネットワーク作りが行われた。


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