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開催レポート

「エンパワーメント・フォーラム2013」開催レポート

   2013年2月26日、「ワーキングウーマン・パワーアップ会議」と公益財団法人日本生産性本部は、東京都内で、第5回となる「エンパワーメント・フォーラム2013」を開催し、約210名の参加者のもと、講演および、「メンター・アワード2013」の表彰式や、パネルディスカッションを行った。

 冒頭、ワーキングウーマン・パワーアップ会議代表幹事である岡本直美 連合会長代行/NHK労連議長は、女性の労働力、能力、経済参加への期待について、「婦人の力強くなるは、男性の幸であり、子どもの福である」という明治のジャーナリスト北村兼子さんの言葉を紹介し、「社会は、男女双方の肩で担がれる。一方の力が弱ければ、他方の苦しみとなるという意味である。超少子高齢化社会といわれている中で、この言葉の意味を改めて噛みしめている。さらに付け加えるとすれば、『女性の力強くなるは、社会の得である』とも言えるのではないか」と述べた。
 また、その期待に女性が応えていく鍵は、「ワーク・ライフ・バランスの推進」と「女性活躍推進のための人材育成の強化」の2点にあるとし、「女性の働く意欲を引き出していくことや、男性と経営者の意識改革、職場風土の改革には、まだ相当の知恵と工夫が必要であり、このフォーラムがその一助になることを願う」とメッセージを送った。

第5回「メンター・アワード2013」表彰式開催

 続いて行われた「メンター・アワード2013」表彰式では、アステラス製薬とあいおいニッセイ同和損害保険の2社がメンター制度表彰優秀賞を受賞するほか、メンティからの応募によるメンター個人表彰も行われた。

◆受賞企業の取り組みはこちらをご覧ください。


これからは女性が男性と同じように責任を持っていく時代

 ワーキングウーマン・パワーアップ会議顧問 牛尾治朗日本生産性本部会長は祝辞で、「最近のような情報化社会、グローバル社会では、女性のほうが適応力はあるのではないか。私の留学時代でも、その国の文化や日常生活に溶け込むスピードは男性よりも女性の方がはるかに速かった。男性はどこかに抵抗感があって、素直に現地の習慣や文化に溶け込めない。男性は短所を批判しがちだが、女性は常に、そこの長所を見出すことが早い。そういうことでも、女性の方が国際社会に向いていると思う。また、IT機器を器用に処理していく能力も女性の方が高いと感じている。
 これまでの社会生活は男性優位だったが、それも急ピッチで変わるだろうと思う。もともと大学では女性の方が圧倒的に成績がよいし、入社試験でも、書類選考だけだと女性が70%を占めてしまうので、面接で調整するという会社もあると聞いている。いよいよ21世紀は女性の時代が来たと思う。
 男女共生型の社会になり、これから男女で日本の経済活動、政治活動、社会活動を担いで行く時代だ。女性が男性と同じように責任を持っていく時代が目前に来ている。」と述べた。




講演「グローバル時代の女性のキャリア」

表彰式に続いて、慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 石倉洋子氏が「グローバル時代の女性のキャリア」と題して講演を行った。

新しい時代、どこで 誰と 何をするのか

 企業も個人も、毎日、分野や地域を超えた戦いをしている。2000年頃は、世界が日本に対して持つ関心はかなり高かったが、今は様変わりで、日本を切り札にして戦うことは難しい。ITで世界が繋がり、どこからでも知識や情報が得られるし、どこかの国で起こったことがすぐに世界に影響を与えるハイパーコネクトの時代だ。
 一方、色々な「断絶」も起こっている。その一つが、ネットにアクセスできるか否かという国のインフラと個人のスキルの有無から来るデジタルデバイド。もう一つが、世代間の認識や経験のギャップである。今の若い人たちは、オンライン、ケータイ世代なので、前の世代とは前提もライフスタイルも全く違う。それを知らずに、自分の生活や経験をベースにして話をしても若い人は感覚としてわからず、話が通じない。世界で大きな問題になっている若年層の失業率も深刻だ。知識やスキルは学校よりも職場で学ぶことが多いが、仕事につけないと学ぶ機会が失われ、この年代がスキルを身につけられない。さらに、今の時代に必要とされる要件と教育にはミスマッチがある。情報が検索できる今必要な分野横断的な視座から考える力や情を取捨選択する判断力は学校で教えていない。
 もう一つが、世界でオペレーションをしたい企業と場所を動くことができない国とのギャップである。こう考えると、今の時代は、ハイリスクかもしれないが、色々な可能性があるともいえる。議論はしつくされているのだから、実行がとても大事だと思う。
 今は、ユニークさで勝負をする競争が主流であり、多様な人がいろいろな方法で勝てる時代だ。「個」が輝ける可能性が高く、自分たちの強みと競争する場をどう組合せるか、が鍵、日本にある「組合せ」のDNAがいかせる。60〜70年代に、日本製品のイメージを一変させて、欧米市場を開拓した知恵や経験を持つ人たちの力と、世界のスピード感覚を持ち、シェアすることを当たり前と思っている若い人たちを繋ぐのもその一つ。そこで効果を上げるのが双方向メンタリング。メンタリングは、普通、経験がある人から少ない人に対するもの。一方、新しい分野を良く知る若い人が上の人に教えるのがリバースメンタリング。団塊の世代と若い人がお互いに強みをいかしてサポートしあうのが双方向メンタリングだ。

21世紀に必要なのは「学び続ける力」と「自分で考える」こと

 ダボス会議(世界経済フォーラム)の下で世界の課題を考える70以上の審議会の中で、私は「教育とスキル」を担当している。その委員会で21世紀に必要なスキルや知識として皆で考えた結果が、『学び続ける力』だった。知識はすぐに古くなるから、オープンな姿勢で、他流試合に行ったり、新しいことに触れたりして、新しいことを常に学び続けることが必要だ。
 もう一つ大事なのは、『自分で考える』こと。もはやほとんど通用しない過去のパターンから離れ、今までの箱から出て自ら考えなくてはならない。『前例は何か』といわれるが、時代が違うのになぜ前例を参考にしなくてはならないのか。前例より新しいことを考えるためにエネルギーと時間を使ったほうがよい。今は情報過多で、いくらでも調べられるから、適当なところでやめて、『私はどう思うか?』を考えてみる。国際会議に行くと、世界経済の分野でも、その分野の世界の権威が全く違うことを言うが、それが当たり前。
 意見がまとまらない、結論がないのが結論なのだ。今までと違うことがどんどん起こっているから、皆もよくわからない。だから逆に言えば何を言ってもいいともいえる。自分できちんと考えた意見なら、あとでいくら変えても構わない。

未来は予想するものではなく創るもの

 今は『どこの誰か』より『何を発信しているか』が大事で、誰でも意見を発信できる。自分の意見を持つためには、『あなたはどう思うか』と聞かれたら、自分はどう言うかを常に考えておくこと。意見だから変わっても構わない。日本の学生は意見を聞かれた経験がほとんどないようだが、小さい時から意見を聞くことはとても大事。米国では小さい子にも意見を聞くし、決めさせるが、決めたことには自分で責任を持つことを徹底している。
 実践と行動。答えを見つけてからやるのではなく、試行錯誤しながらどんどんやる。未来は予想するものではなくて、私たちが創るもの。キャリアについても、今は世界のどこでも働くことができる。誰と働くのか、何を求めて何のために仕事をするのか、ナビゲートするのは自分自身だ。世界の海は繋がっている。さあ船出をしよう。

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